褥瘡(じょくそう)という言葉を目にしても、医療に携わっていなければピンとこないかもしれません。
「床ずれ」の医学的な呼び名が褥瘡です。
長時間圧迫されることで血流が確保できず、圧迫された場所が傷つき、褥瘡を発生させます。
本記事では褥瘡の原因やよく発生する場所、主な症状、重症度の分類、予防法などを解説します。
褥瘡に関する知識と予防法を身につけ、自分や家族の健康を守りましょう。
褥瘡とは?
褥瘡は同じ姿勢で寝たきりの人に発生する症状で、「床ずれ」として知られています。
寝たきりになると体重で同じ場所が圧迫され続け、血流が悪化します。
最初は皮膚の一部が赤みがかっていることが多いですが、症状が進行するとただれたり、キズができたりしてしまいます。
褥瘡の原因
褥瘡の原因は同じ場所に圧力がかかり続けることです。
通常、私たちは寝ている間も姿勢が変化しています。
これを体位変換といいますが、体位変換することで同じ場所に圧力がかかり続けることなく横になっていられます。
しかし、何らかの理由で体位を変えられなくなった人は同じ場所に圧力がかかり続けるため、皮膚細胞に十分な栄養・酸素が行き渡らない状況が発生します。
そうなると、圧迫部分が赤くなったり、内出血や水泡ができたり、皮膚がただれる「びらん」などが発生したりします。
発生しやすい人
どのような人に褥瘡が発生するのでしょうか。
以下の状態に当てはまる人は褥瘡が発生しやすい状況にあります。
・自分で体位変換ができず、長時間寝たきり状態の人
・栄養状態が悪い人
・皮膚が薄くなったり弱ったりしている人
・糖尿病などにより神経障害が発生しているため、痛みやしびれを感じにくい人
・何らかの理由で運動障害のある人
上記に当てはまる人は長時間同じ場所に圧力がかかりやすく、褥瘡の症状が出やすくなります。
褥瘡がよく発生する場所
褥瘡が起こりやすい場所(好発部位)は、皮下脂肪が少なく骨が出ている部分とされています。
姿勢によっても発生する場所が異なりますので、仰臥位・横臥位・座位の3つの姿勢にわけて、発生しやすい場所を見てみましょう。
仰臥位(仰向き)の場合
仰臥位の場合、後頭部や肩甲骨、お尻の骨の仙骨、かかとなどに褥瘡ができやすいです。
いずれの個所も骨が出ていて力がかかりやすい場所です。
横臥位(横向き)の場合
横向きの横臥位の場合は、耳や肩、ひじ、腸骨、ひざ、くるぶしといった場所によく発生します。
仰向けのときと同じく、皮下脂肪や皮が薄く圧力がかかりやすい場所です。
座位(座っている)の場合
座っている姿勢のときは、座骨や尾骨、背中などで発生しやすいです。
車いすなどを使用して長時間座っていることが原因で症状が出ます。
初期症状と重症度分類
早期に発見すると重症化する前に治癒できます。
できるだけ早期に発見するには、周囲にいる人が褥瘡の症状に気づかなければなりません。
ここでは褥瘡の初期症状と重症化分類について解説します。
初期の症状
症状の始まりは皮膚が赤くなることです。
皮膚の赤みや内出血、水ぶくれは褥瘡の典型的なサインです。
褥瘡かもしれない部位を指で押すと、褥瘡かそうでないかの見分けがつきます。
指で3秒ほど軽く押し、押された部位が白くなって指を離したら赤く戻るといった場合は褥瘡ではありません。
指で押しても白くならず赤いままであれば初期症状である可能性が高まります。
初期症状からそのまま回復することもありますが、急速に症状が悪化することもあります。
重症度分類
発生直後から1〜2週間の時期を急性期といい、それ以降は慢性期といいます。
慢性期は以下の3つのパターンで経過します。
・急性期から治癒
・急性期から浅い褥瘡に移行してから治癒
・褥瘡が皮膚の深部に達して重症化する
こうした症状を、皮膚に到達した深さ(深達度)で評価する方法をNPUAP分類(現在はNPUIP分類とよばれる)といい、褥瘡の分類基準としてよく用いられています。
ステージ1は消退しない発赤で、透明なプラスチック板を押し当てても赤色が消えない状態です。
ステージ2は部分欠損または水疱です。
黄色壊死組織(スラフ)は発生していませんが、真皮が部分欠損している状態でステージ1よりも損傷が深い部分に達しています。
ステージ3は全層皮膚欠損で、皮膚の下にある皮下脂肪が見えてしまっている状態です。
ただし、骨や腱、筋肉などは露出していません。
そして、ステージ4の全層組織欠損では、骨や筋肉が露出してしまっています。
予防法
一度悪化すると治癒するまでに長い時間が必要となります。
予防するにはどうすればよいのでしょうか。
同じ部位への圧迫を避けるには体位を一定間隔で変えるのが効果的です。
なるべく身体の多くの部分がベッドについた状態にするとよいでしょう。
体圧を分散するマットレスの使用も効果的です。
もちろん、栄養状態の改善も有効な方法です。
これらの方法を組み合わせ、褥瘡になることを防ぎましょう。
まとめ
今回は寝たきりの人で多く発生する褥瘡について解説しました。
身体の位置を上手く変えられない上に、床ずれが発生すると非常につらいものがあります。
認知症などが重なると、ケアをしている人も大変です。
かといって、家族だけで対処するのも大変です。
医療機関や介護施設などの専門家のアドバイスや支援を受けながら対応するのがベストではないでしょうか。