ターミナルケアは誰しもが受ける可能性があります。
ターミナルケアにおける看護の役割や緩和ケアとの違い、受けられる場所による違いなどを詳しく解説します。
ターミナルケアと看護について
ターミナルケアを日本語にすると「終末期医療」。
終末期(ターミナル期)とは病気が治る可能性がなく、余命半年など余命がわずかになった状態を指します。
ターミナルケアは苦痛を伴ってでも延命措置をするよりも、患者さんの苦痛を取り除いて残りの人生を豊かにすごし、穏やかな最期を迎えるためのケアのことです。
ターミナルケアの内容は「身体的ケア」、「精神的ケア」、「社会的ケア」の3つに分けられます。
身体的ケアとしての看護
身体的ケアの内容
・体の痛みや不快感を取り除く、または和らげるための投薬
・食事またはチューブ・胃ろうによる栄養補給
・入浴・排泄の介助
身体的ケアは体の苦痛をケアするものです。
入浴は介助が必要な段階になると患者さんの負担が大きいため、必ずしも行う必要はありませんが、その代わりに清拭(せいしき)で全身をきれいに拭きます。
自力で食事ができない方にとって栄養補給は延命措置ともとらえられるため、栄養補給をするのかしないのかというデリケートな問題に患者さんとその家族、看護する側の3者でしっかりと話し合っておく必要があります。
精神的ケアとしての看護
精神的ケアの内容
・リラックスしてすごせる空間を作る
・死に対する恐怖や不安と向き合い、患者の心に寄り添う
延命措置をせずにターミナルケアに切り替えたからといって、患者さんの恐怖心や不安がなくなるわけではありません。
ベッドの周りに好きなものを置くなどリラックスできる空間にしたり、家族や友人と触れ合って穏やかで充実した時間を作り、患者さんの精神的サポートを行うのが目的です。
社会的ケアとしての看護
社会的ケアの内容
・ターミナルケアにかかる費用などの経済的負担の軽減
・患者の家族の負担やストレスのケア
・遺産相続や遺品整理のサポート
患者さんは家庭、会社、友人・知人など複数の社会的コミュニティに属しています。
病気になって家族や会社に迷惑をかけているのではないか、人間関係が絶たれてしまったなどの各コミュニティでの役割の喪失や人間関係の変化による悩みをケアする必要があります。
また、在宅介護に切り替えたり、福祉制度を利用したりとソーシャルワーカーに費用を軽減できないか相談することも重要です。
ターミナルケアと緩和ケア・ホスピスの違い
ターミナルケアと似た意味の言葉として「緩和ケア」、「ホスピス」があります。
それぞれの内容とターミナルケアとの違いを見ていきましょう。
緩和ケアとは
WHO(世界保健機構)は、緩和ケアの定義を「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」としています。
緩和ケアは、病気による痛みや病気と迫りくる死に伴う様々な苦痛を緩和し、患者さんのQOL(Quality Of Life=生活の質)を上げることが目的です。
日本での緩和ケアは一般的にがん・エイズ患者が対象で、病気の進行度には関係なく、治療と並行して行われるのがターミナルケアとの違いです。
ホスピスとは
ホスピスは死期が迫っている患者さんに対して苦痛を和らげ、身体的・精神的・社会的といった複数の観点からケアを行うものです。
緩和ケアとは違い、治療や延命よりも残された時間を穏やかにすごすことに重きが置かれています。
内容はターミナルケアと非常に似通っていますが、ホスピスは日本では主にがん患者が対象で、ターミナルケアはがんをふくむ全ての病気の患者が対象という点が異なっています。
ケアを受けられる場所の違い
緩和ケアは治療も同時に行うため、病院に入院して行うのが一般的ですが、ホスピスは病院に加え、ホスピス施設と自宅での在宅看護も候補に挙がります。
医療施設によっては「ホスピス緩和ケア」などのように、緩和ケアとホスピスをまとめていることもあります。
ターミナルケアを受ける場所による違い
ターミナルケアを受けられる場所は病院・介護施設と自宅の2つに分けられます。
それぞれにメリットとデメリットがあり、それらを理解したうえでどちらを選ぶのかが患者さんと家族にとって重要になります。
病院や介護施設でのターミナルケアの特徴
メリット
・プロによる高度な医療とケアを24時間受けられる
・家族の負担が少なく、精神的ケアに専念できる
デメリット
・自宅ほど寛げず、孤独感を感じやすい
・費用が高い
医師や看護師、介護士などが常に見守っているため、家族の負担が少なく、患者さんも食事や排泄などにかかるストレスを少なくできるのが大きなメリットです。
一方、ベッドを自宅ほど寛げる環境にするのは難しく、家族に会えるのは面会時間に限られるため、患者さんがリラックスしにくく、孤独感を抱えやすいのが難点です。
また、入院・入所費用が高く、どのくらいの期間になるのかは誰にも分からないため、不安に感じる方は多いでしょう。
自宅(訪問看護)でのターミナルケアの特徴
メリット
・家族とすごせる時間が多い
・費用を抑えられる
デメリット
・何かあったときに医師に診てもらうまで時間がかかる
・家族の体力的負担と精神的負担が大きい
自宅で訪問看護や介護サービスを利用してのターミナルケアは家族とすごせる時間が多い分、家族の負担はどうしても多くなります。
ですが、寛げる環境と残された時間を家族とすごせる点は患者さんの精神面でのメリットが非常に大きいのが特徴です。
看護・介護サービスの利用状況によって費用は変わりますが、これらのサービスを活用することで患者さんと家族の双方の負担を軽減できます。
まとめ
ターミナルケアは死期の近い患者さんの様々な苦痛を取り除き、残りの人生を穏やかにすごすためのものです。
患者さんと家族はもちろん、看護する側にとっても、いつか訪れる死について考えさせられることでしょう。
人生の最期をどのようにすごしたいか、ターミナルケアの重要性は今後さらに大きくなっていくことが予想されます。